アンサーソン

おひとついかが

Lies

注・久々に長めです(しかも本題じゃないほうで)。

 

嘘を吐かれることが好きな人はいないと思う。

大概の人は嘘を吐かれたと知ったら驚いたりショックだったり「はーん、そういう嘘を吐く人なのねー、ほうほうそうですか、ほーん」とその嘘を吐いた相手を軽蔑したりする。最後の「はーん」は私が嘘吐かれたときの大抵の感想。大人になっても「息をするように嘘を吐く人」というのは割に沢山いて、特に私は「嘘を吐いたら絶対にバレてはならない」と「嘘を吐くとあとあと面倒なことが多いから基本的に嘘は吐きたくない」と思いながら生きているので、極力嘘は吐かないようにしている。もちろん、嘘を吐いた相手を傷つけるかもしれないと思うのも理由のひとつ。

 

私が特に苦手なのは「自分を大きく見せる嘘」で、当然そんなの嫌いな人の方が多いと思うのだが、例えば……例えばというかもうこれは実際にあったことなのだが、ほぼ初対面の男性が「俺いま教習所通ってるんだ」という。聞けば、バイクの免許を取得するのだという。

私の人生はなぜかバイク乗りに接する機会が結構多く(男女問わず)、これまでも中型免許(〜400cc)だけでなく限定解除(大型。401cc〜)の免許を取って大型に乗っている人、中免を持っていて限定解除を取ろうとしている人(そして何度か落ちている人)など色々いたので、私自身は普通自動車免許すら所持しておらず、バイクの免許もないのにバイク周辺の事情にはそれなりに詳しい。カワサキのバイクを見ると「カワサキだ」と毎度思うし(カワサキのバイクは特徴的)、路上にバイクが停まっていると「あれはどこのバイクかな」とか「あれは何ccくらいのエンジンかな」と見てしまう。

そんな感じなので、バイクの免許を取ろうとしているという話を聞くと「わーそうなんだ!私も少し話せるよ!(何も持ってないけど!)」と少しテンションが上がるし、何よりも話がわかって嬉しいので、件の「教習所に通っている男性」にも話を聞いた。聞けば「現在中免を持っていて限定解除を取ろうとしている」と言う。なるほどそうなのかと思い、同じ状況で何度か限定解除の試験に落ちている人が言っていた「試験に使うバイクには砂袋が付いている」(バイクの試験では「バイクを起こす」という実技があり、普通に持ち上げようとすると持ち上がるわけがないのでてこの原理を使ってバイクを起こすのだが、練習で何事もなく成功できるようになって「よしバッチリだ」と試験に赴くと途端に起こせなくなるので、この実技で失敗した人たちの間では「実技用のバイクには砂袋が詰まっている」とまことしやかに囁かれているという話←この話は通じる人と通じない人がいる)という話や、白バイの人たちはバイク乗りとしては超絶テクニックの持ち主で、自分たちと同じようにバイクが好きな人たちなので、速度制限なんかでちょっと停められたときにも「ここでスピード出しちゃうのわかるけどねー」と気持ちをわかってくれたり(わかってくれても減点はされる)してバイク乗りは大概みんな白バイの人が好きですよねという話をしたりしたのだが、どうも反応が鈍くて「あー!そうそう!そうなんだよ!」というような、バイク乗りあるあるのいつものやりとりができなくて「おや?」と思っていた。

一方で、「Vespaにいま乗ってるんだけど、実はVespaって50cc以上あるから中免じゃないと乗れないんだよね」とか「Vespaはガソリンに混ぜ物しないといけないんだよね」という話を聞かされ、そんなこと全く知らなかったので(というか今まで会ったバイク乗りの感覚だと中免持ってるのにVespaにしか乗らないの勿体無いと思ってしまう)またバイクの知識が増えたなーとそれなりにありがたく思ってその場は終了。

 

それからふた月ほど経ちまたその人と話す機会があったとき、「そういえばバイクの免許取れたんですか?」と聞いたら「本格的に実技に入ったところ」と言う。ていうか今まで座学だったのかよ。

そのまま話しているとどうも話が食い違うので、「限定解除取るんですよね?」と確認したら、「中免取ってから考える」と。えっ、待って意味わかんないし、中免持っててVespa乗ってるっつってたじゃん。「あれ?中免持ってていま限定解除取ろうとしてるんでは…?」と聞いたら「違うよー、いま中免取ろうとしてるんだよ」と返してきた。

 

あーなるほどこれまでの話が通じなかった理由がわかった、と思った。

 

その嘘一体なんなの?「俺Vespa乗ってんだよね」って言ってたじゃん。理想?理想を語ったの?理想の俺像をそのまま私に話したの?

 

凄く些細なことなのだが、こういう嘘ってバカバカしいし「いやこの前一生懸命バイク乗りあるあるを話した私の労力を返せよ」と思ったし、ああこの人そういう嘘を吐くタイプなんだなと思って、そこからその人とはたまにメールするくらいになって疎遠になり、結局フェイドアウトした。そんなほんの少しだけ自分を大きく見せたところでなんのメリットもないぞ、と思い、未だにこの手の嘘が私の中で最も苦手な嘘だし、こういう「すぐバレる(というか自分で嘘吐いたこと忘れて自分でバラす)嘘」を吐く人を軽蔑している。嘘を吐くなら徹底しろ。

でもこういう感じで嘘を吐かれることは意外と多いよね…。

 

 

 

長々書いてきたが、実は上が本題ではない。

ここからが本題である。

嘘を吐かれた。昨日のことである。でも全然嫌じゃなかった。

嘘を吐かれたのに嫌な気持ちにならないってそうないことじゃないのかと思って自分でも少し驚いている。

 

上で労力を使いすぎたし、内容があまりにパーソナルなので詳細は割愛するが、一昨日何人かで飲みに行ったときのことについて、昨日の朝、嘘を吐かれた。そのときの話をそこにいた別メンバーと帰りぎわに話していて嘘が発覚した。ややこしいので嘘を吐いたメンバーをAさん、嘘を暴露したメンバーをBさんとしよう。

 

BさんはAさんが私に嘘を吐いていたことを知らなかったので、嘘を暴いてやろうと思って暴いたわけではなく、話の流れで「こうだったよー」と話したことで私が

「え?待って。Aさん朝にこう言ってましたよ?」と確認。

「あれ?マジ?Aがそういうことにしようとしてたなら言ったらマズかったかな」

「えー、なんですかその嘘!Aさん全然意味わかんないしなんでそんな嘘吐くんですか!笑」

「昨日、まふゆさん(仮。私のこと)あれでこうでこうだったじゃない?だからそういうことにしておかないと悪いと思ったんじゃない?Aそういうの結構気にするから」

「なんだよAさん、そんなこと気にしなくていいのに!」

 

なるほど。

最初にその嘘が発覚したとき、まさかそんなことで嘘が出現しているとは思わなかったのでまず驚きが先に来て「え?え?え?どういうこと?」ということしか考えられなかった。続いてBさんがAさんが吐いた嘘について予想を立てて解説してくれたので「…ああ…、そういうことか…」と思い、嘘を吐くまでの一連のAさんの考えの流れについて、一から十まで全く嫌な気持ちにならなかったので、嘘吐かれても嫌な気持ちにならないことってあるんだなあと思った。意外だった。

更にいうと、朝の時点でAさんが嘘を吐かずに「こうだったよ」と話していたら私は「えーマジすか酷いわー笑」という反応をしたと思う。ちょっとショックも受けただろうと思う。

でも実際Aさんが嘘を吐いてくれたことで、その後事実が発覚する前も後もショックを受けることは全くなかった。ちょっとのショックを回避できた。

 

人間が誰かと関わって生きていくとき、全ての状況と感情を事細かに説明することができるなら本来こんな嘘は必要ないのだろうけれど、いちいちそんなことしながら生きてはいけない。私は「嘘は悪」というスタンスで生きて来て、ダメな嘘ももちろん世の中には物凄く沢山あるけれど、実際は必要な嘘もあるんだよねーと改めて思った。

今回吐かれた嘘は今まで経験ないほどベストな嘘ではないだろうか。誰も傷ついていない。

嘘を吐くならこういう嘘を吐きたい。

 

 

 

結論。

 

私、知らないところでめちゃくちゃ気を遣われている。

申し訳ない。